布団の下に簀の子を敷いた
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今の時代、ベッドで寝る日本人と布団を敷いて寝る日本人はどちらが多いのだろうか。ベッドは布団のような上げ下げが必要ない。床から離れているので、ほこりがとどきにくく、放熱が良く、空気のとおりもよい。布団は上げ下げすることで、同じ部屋が寝室になったり、居間になったりと空間を自由に使える。私は畳の上に布団を敷いて寝ている。しかもベッドの良い点を一部取り入れている。上げ下げしないのだ。要するに、万年床になってしまっていて、一年中敷きっぱなしである。大変楽でとても良い。
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梅雨のころ、何の拍子であったか、私はマットレスの下を見た。そしてマットレスにカビが生えているのに気が付いた。ベッドの良い点の一部を布団に取り込んだと思っていたら、物にはいろいろ理由があってそうなっているものだ、上げ下げしない布団は、湿気もたまり、通気性も悪かったのだ。さて、気が付いたはいいのだが、生活力のない私はどうすればよいのかわからない。どうしよう。途方に暮れてしまった。家内に話した。家内はカビキラーを散布した。
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あれから数日後、家内はマットレスの下に敷く簀の子を買ってきてくれた。こんなものがあるなんて知らなかった。家内も偶然見つけたのかもしれない。木製で三パーツぐらいから成り、各パーツの間は強いプラスチックのベルトでつながれている。これをマットの下に敷くわけだ。これで万年床でも換気が良くなり、カビ対策になる。世の中、便利なものがあるものだ。またこういう商品が売られているということは、私同様万年床でマットレスにカビをはやしてしまう人も少なくないということだ。少し安心する。
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簀の子を敷いた布団の上に寝てもう数日になる。ここら辺に木片があるなというのは多少わかるが、寝心地が悪いわけではない。
何よりもカビを気にせず安心して寝られる。そして畳から距離が数センチしかないので、はいだ毛布やうちわ、枕を落としてもすぐに拾える。布団の良さを保っているわけだ。なかなかの優れものだ。
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あれから数か月がたった。カビはどうなったか。おっかないので見ていない。良くなっているのだろうが……。それからこの数か月でマットレスと布団が段々ずれることを発見した。寝返りでも数百回も重なるとそれなりの力を発揮するようだ。端をもって引っ張ればよいので、直すのに手間はかからない。まあ、厳密に直したい潔癖タイプの人にはかなりの手間かもしれないが。
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この頃どうも夢見が悪い。大学入試の準備が進まない夢ばかり見る。まだトラウマから抜け出せないでいるのだろうか。いずれにしても布団の寝心地とは無関係であることは間違いない。